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秋の一日(3) [紀行]

「秋の一日」:星溪園句會 江口哠波::『ホトトギス』第28巻第4号:大正14年刊:ホトトギス社

ホトトギス吟行会が、福田村できのこ狩りをした後、星渓園で「茸」と「秋山」を題にした句会を開催しています。記述は、熊谷の俳人江口哠波(1878-0965)です。

「帰途土塩の別れ道で山案内の神山氏に別れて自動車が来ないから一行はぽつぽつ歩き出した。爪先昇りの人家のある處で漸く迎への自動車が来た。後れ馳せの煤六さんがそれに乗り込んで居られた。一臺では乗れきれない。丁度たけし先生は歩く方が面白いと仰しやる。其處で一宿、一路、孤童の三氏は句会の仕度があるので一足先に自動車で帰る事になる。外に東京の二方も乗り込まれる。たけし先生と煤六さん其他の方々と私の七人が又ぽつぽつと歩き始めた。野原村を経て村岡の稲田を通ると吾等の一団に驚いてか一群の稲雀が舞ひ上る。たけし先生があれ稲雀がとおつしやる。私は何か句が出来さうに考えた。村岡の酒屋の處で二度目の迎への自動車が漸くに来た。自動車を急がせて四時半頃星溪園に着いた。園は土地の舊家竹井氏の別邸で泉の湧く大きな池を控へ数寄をこらした建築で仲々幽雅の仙境である。たけし先生には曾てほととぎす社の太田、熊谷地方吟行の折に虚子先生と同行で立寄れた事のある處で深く印象の残られてある處だとの事である。留守居の中川迂呆老人は古くからの俳人であって、迂呆さんの好意で句会の場所に借りたのである。設けの座敷に通ると先着の人達によって句会の仕度が出来て居た。先生の出題茸と秋山の互選が始まる。披構された時分には既に日はどつぷり暮れて鏡の様な月が泉の空にかかって居た。そして六時頃この星溪園を辞して道を月の櫻堤に出た」

下の写真は、大正期の絵葉書で、星溪園の池と建物が写されています。
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