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肥前産京焼写し碗 [近世]

現在出土遺物の整理中の山神遺跡から出土した、近世陶器片を紹介します。
DSCF6265.JPG見込み部楼閣山水文の一部
DSCF6264-2.jpg高台内「清水」刻印
この陶器は、「肥前産京焼写し」と呼ばれ、当時すでに高級喫茶碗としての名声を博していた「京焼」というブランド名を念頭に置き、大量生産よるコピー商品の流通販売を伊万里の陶工およびその管理者が狙った商品です。
コピー商品と言えど、現在のところその出土例は決して多くなく、江戸の大名屋敷クラスで数点~30 点程が出土しているにすぎません。
この「肥前産京焼写し」は、18世紀、伊万里の磁器の窯で焼かれた陶器で、素地は緻密で、卵黄色気味の釉が掛り、内面には呉須(藍色顔料)で楼閣山水文様が描かれています。高台内には「清水」「木下弥」「新」等の印が押されています。 これらの特徴は、それまでの肥前産陶磁器類の製作体系の中には見られない異質なもので、京焼」に類似することから、「京焼写し」と呼ばれています。
写真は、出土土器の見込み部を写したもので、楼閣山水文の一部が描かれています。この楼閣山水文は、当初緻密に描かれていたものが、大量生産に対応するため抽象化していき、18世紀には4段階の変遷が確認されており、本資料は、18世紀後葉に位置付けられます。
コメント 2023-10-03 160154.png18世紀楼閣山水文の変遷
この陶器は、抹茶用の喫茶碗であり、大名屋敷や、禅宗寺院等から出土例が多く、なぜ本遺跡からこのような資料が出土したのか、今後の課題です。
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