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竹井耕一郎の漢詩 [展示]

竹井澹如(1839~1912)の長男耕一郎が昭和9年に、自分の半生を思いながら作った漢詩を紹介します。
「慣混思想久不帰 半生薄迹近爲磯 炙茫湖海閑鴎後 寒廊山川断雁飛 豪氣磨來剰詩骨 流年尽処掩禪扉 堂鐘敲起積陰譏 正是一陽萌發機」
意訳すると
「混濁した思想に翻弄され、本来の自分を失って久しい。
わが半生を振り返れば、納得できる足跡を残せなかった。まるで浅瀬の磯にただ戯れていたようなものだ。
夏の盛り(青春・壮年時代)湖海において静かな鴎のように迷い、飛ぶこともなく後れをとった。
冬(中年・老年時代)の山川において、雁は悩みぬいたが、飛び立つことはなかった。
豪気を持って詩をかけば、冗長な骨格のない詩ばかりだ。
過ぎゆく年月は、結局、禅寺の扉を動かさず、静かに門を閉ざし自己満足で生きてきたようなものだ。
しかし、寺の鐘が、これまでの積陰の非難などの愁を振り払えば、まさしく良い方向にむかう始まりである。」
竹井耕一郎は、明治元年に澹如の長男として生まれ、東京帝国大学・大学院で憲法学を専攻した法学士です。卒業後は、早稲田大学、一橋大学で憲法学の講座を持ちますが、肺疾患を患い退職してしまいました。その後は、漢籍に造詣が深く、詩文に優れていたことから、文化人として半生を送りました。
昭和8年には、星溪園内に積翠閣を建てています。
この掛け軸は、現在、積翠閣の展示室に展示していますので、ぜひご覧ください。
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