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新潟の旅-熊谷の名工の足跡を辿る- No.4 西福寺 [熊谷の名工]

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 石川雲蝶の作品群の中でも特に有名なのが、新潟県魚沼市に所在する西福寺開山堂の彫刻です。開山堂は、西福寺二十三世大龍和尚の発願により安政4年(1857)に建立されました。様式は鎌倉時代の禅宗仏殿構造、屋根は茅葺きの二重層で上層は入母屋造り、正面には唐破風向拝を有しています。向拝及び堂内の彫刻はすべて雲蝶によって手掛けられました。
 向拝正面の唐破風下には、鳳凰が舞い、烏天狗が守護し、虹梁の波の彫刻は躍動感に満ちています。左右の柱には、獅子と象の木鼻彫刻が施され、目にはギヤマン(ガラス)が使われています。
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向拝正面 烏天狗と波の彫刻
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向拝 獅子と象の木鼻彫刻
 向拝の彫刻の素晴らしさもさることながら、堂内を一杯に埋め尽くす内部の彫刻群は息をのむ迫力で、観る者を圧倒します。雲蝶の作品は物語性が強く、開山堂内の彫刻は曹洞宗開祖の道元禅師の伝記がモチーフとなっています。三間四方の吊り天井に施された透かし彫りの大彫刻は、道元禅師が宋に修業した際、天童山に行脚の途中、盧山で猛虎に出会ったときの物語です。岩絵の具で、極彩色に彩られた彫刻は、当時のままの色彩で、観る者を魅了します。このほか周囲を囲む欄間彫刻や梁上の彫刻にも、道元禅師の物語が彫られ、雲蝶の作品が堂内にぎっしりと詰め込まれています。
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開山堂堂内※7月~9月に限り、撮影可能。
 また、雲蝶は木彫だけでなく、絵画や石彫などにも優れた才能を発揮しました。西福寺の本堂では、雲蝶が手掛けた襖絵や書院障子なども目にすることができます。雲蝶が手掛けたこれらの作品は、「開山堂の雲蝶彫物附雲蝶筆欄間二面襖絵十六面」として昭和48年(1973)に新潟県の文化財に指定されています。

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 雲蝶の作品で有名な西福寺ですが、実は小林源太郎もこの地に足跡を残しています。開山堂の隣に高くそびえる鐘楼。この鐘楼の彫刻を手掛けたのが源太郎です。開山堂より7年早い、嘉永3年(1850)に建立された鐘楼の四方には、それぞれ蟇股が備わり、その左右を精緻な彫刻が飾ります。東側には亀と水鳥、西側には鷲と小鳥・唐獅子と牡丹、南北両側には源太郎が得意とした龍の彫刻が施されています。天井には、円形状に鶴と雲の彫刻が施され、外側四方に配された象の木鼻彫刻も見事です。
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東側 亀の彫刻
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天井 鶴と雲の彫刻

 梵鐘は、新潟の土屋忠左衛門の鋳造で、三十三体の観音像が模られています。この梵鐘には、天皇のお許しの証である『勅許(ちょっきょ)』の銘があることから、戦時中に重要美術品として認められ、供出除外と指定されてお寺に戻された名鐘です。
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「越後國蒲原郡新潟住 御伊鑄物師 土屋忠左エ門」の銘が刻まれた梵鐘
 

参考文献
・木原 尚2010 『新装版 越後の名匠 石川雲蝶 足跡と作品を訪ねて』
・小出町教育委員会『小出町史 上巻(序説・原始・古代・中世・近世・民俗)』
・曹洞宗赤城山西福寺パンフレット
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