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新潟の旅-熊谷の名工の足跡を辿る- No.6 青木酒造 [熊谷の名工]

 新潟県南魚沼市塩沢の牧之(ぼくし)通りは、旧塩沢町の中心市街地にあり、かつて三国街道沿いの宿場町として栄えた歴史ある通りです。江戸時代、雪国越後に暮らす人々の生活を記した「北越雪譜」の著者・鈴木牧之(ぼくし)生誕の地であり、その名にちなんで名付けられました。道路改良を機に、雪国の歴史と文化を活かすまちづくりをめざして、雪国特有の雁木の町並みの風情が再現されました。
 この牧之通りのなかほどに享保2年(1717)創業の老舗酒蔵、青木酒造があります。店舗の外には銘酒「鶴齢」の文字が入った看板が掲げられており、その縁を精緻な龍の彫刻が飾ります。この彫刻は、かつて青木家の店舗前に置かれていた小林源太郎作の立て看板の彫刻の一部を再利用したものです。台風で倒れ、破損してしまいましたが、解体して看板の部位だけは残し大切に保管されてきました。
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銘酒「鶴齢」の文字が入った看板装飾

 店内に入ると縦長の額に入った当時の立て看板の見取り図を目にすることができます。見取り図の右端には「けやき立てかん者んの圖(けやき立て看板の図)」と書かれ、看板の中央には『薄荷圓(はっかえん)』の文字があります。江戸時代、この地域では薄荷が多く自生しており、冬の気候を利用した蒸留技術で薄荷を精製し、商品名を『薄荷圓(はっかえん)』として販売していました。青木家もかつて薄荷を商っており、この立て看板は『薄荷圓』をPRするためのものでした。
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立て看板見取り図

 店内には、立て看板の持ち送り部分の彫刻が当時と同じように裏表を合わせたかたちで展示されています。とても大きく重厚感のある彫刻に圧倒されます。またその他の細かな彫刻の一部も店内で大切に保管されていました。
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持ち送り彫刻
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その他の細かな彫刻

 青木酒造では、今でも薄荷油を販売しています。薄荷油は、虫除けや消臭、暑さ対策など様々な用途があるようです。最近では、マスクにつけて薫りを楽しむ人もいるそうです。店員のお姉さんが「よかったらつけてみてください。」と試供品を薦めてくださいました。手の甲に油を垂らしてのばすと、スッと抜けるようなさわやかな香りが心地よく鼻の奥に広がりました。


参考文献
・木原 尚2010 『新装版 越後の名匠 石川雲蝶 足跡と作品を訪ねて』


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